2010年3月15日
ストラテジーブレティン (9号)
ドルキャリーから円キャリーへ ~株もドルも悲観論では梯子を外される~

米国回復と投機のドル安の終焉

米国経済において、否定の余地ない力強い立ち上がりが確かになった。それに端を発した潮目の変化がそこここに起こっている。株式市場では、米国SP500指数、FTSE100が大暴落後の戻り高値を更新、主要国株式市場は1~2月の株価調整を終え再騰を開始しつつある。新年入り後の相場は米国、英国が主導し、大陸欧州、日本、新興国は出遅れている。それは市場主義に基づく米国が最も、柔軟で調整が早く、世界景気回復を主導するということが見えてきたからである。雇用悪化の裏側で進行し、メディアが全く報道してこなかった重要な事実「米国企業部門の空前のスリム化」が、米国経済本格回復の起動力となっている。

ドルキャリーの終焉

米国の立ち直りは円/ドル相場のトレンドも決定的に変えるだろう。米国では出口政策が議論され始め、公定歩合が引き上げられた。今後、国債買い取りに続き住宅ローン債券の買い取りも停止、超金融緩和修正へと進む。米国の利上げはドル借金を原資とするグローバル投資、ドルキャリートレードを困難にする。他方、日銀は更なる量的緩和を強化する姿勢。この結果、3ヵ月LIBOR(ロンドン銀行間取引金利)は半年ぶりに円がドルを下回った。今後、ドルキャリートレードが終焉すれば新たな調達通貨として円登場の公算が強まる。また日本国内勢も、ゼロ金利預金に眠らせていた個人資金を金利差と円安見込みの為替差益を狙って、海外流出させ始めるだろう。円の大規模な流出は、購買力平価(1ドル115円;2009年)から30%も過大評価されている円の水準訂正を進めるだろう。

ペナルティー円高の再現はない

この円安転換は全員賛成? と言っていいのではないか。つまり円を買う主体はいないのではないか。ドルに代わる調達通貨を模索しているグローバル投機家(投資家)は、唯一のゼロ金利かつ過大評価されている円は、ありがたい存在である。対デフレ戦争の前線に立っている日本政府・日銀にとっても円安は緊要である。全くリターンのない日本の貯蓄者に対しては、円安は大幅な金利差と為替差益を同時に取得できる数少ない高リターンを提供する。当然日本の輸出企業、海外の輸入業者はすべて賛成。唯一、潜在的反対者は日本輸出製品と競合する海外企業であるが、彼らにとってその必要性はかつてに比べて著しく低下している。つまり1980年代以降ペナルティー円高(購買力平価からかけ離れた極端な円高)をもたらした要因はなくなっている。今、円安反対派は見えなくなったのである。

日本に現れた離米のリスク

それどころが日本の政治社会情勢に離米のリスクが現れ、日本を懐柔する必要が出てくる。世界の安定にとって、市場経済とグローバリゼーションに対する信頼を失って漂流する日本は大きなリスクとなる。鳩山民主党政権が成立当初の諸問題を適切に処理すれば、大幅な円安が実現するのではないか。

それは日本において、輸出回復、円安転換、デフレの鎮静化、株式等の資産価格上昇という好循環を引き起こす。悲観論が梯子を外されるのは時間の問題であろう。

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