2011年2月22日
ストラテジーブレティン (40号)
過度の悲観修正が招く国債売りパニックの可能性
~日本株にはプラスに作用~

呉越同舟の国債売り

エジプトからリビアへの地政学不安の波及で一時的に沈静化しているが、世界的に国債売りの津波が起きつつある。楽観派も悲観派もソブリン売りでは共通の大合唱である。その口実は、財政悪化懸念、インフレ懸念、景気回復期待、QE2終焉の見込み、など様々である。しかし、国債外しというポートフォリオの大変更、つまり需給要因の変化が確かなので人々の確信度は高い。イールドカーブ(10年債利回り-2年債利回り)は過去最高水準までのスティープ化が進行しており、それは将来のインフレ期待の高まりと利上げを予見していると見られる。

過度の悲観の是正の行く先

こうした趨勢の根本原因は過剰な悲観の修正である。2010年夏場以降悲観論が再び台頭し、投資家が過度のリスク回避に走っていた可能性が大きい。しかし、「米国が日本型のデフレに陥り長期停滞と長期金利の更なる低下が起きる」という悲観シナリオは完全に棚上げされ、株式価格と債券価格の歪みの是正が起きている。ただし国債を売ってどこに行くのか、で意見が異なる。強気派は株式、弱気・警戒派は金、新興国の高利回り債、高利回りの社債などである。

3つのシナリオ

3つのシナリオが考えられる。
①持続的景気回復とインフレ抑制(goldilocks scenario)で着実な株価上昇が続く
②持続的景気回復と株高トレンドは継続するが、金利上昇が短期的に市場を混乱させる
③財政赤字、インフレ、ドル安等による米国長期金利の上昇が景気回復を断ち、株高は早晩頓挫する

弊社は2011年に関しては、③の可能性はごく小さいと考える。以前からレポートしているように、米国経済のファンダメンタルズは、企業部門の空前の利益、家計部門の消費節約と貯蓄率の向上、住宅価格の底入れなど、ほぼ回復に向け準備万端の状況にある。これに加えての株高による資産効果で、消費と雇用拡大が着実に実現している。主要機関の2011年の経済見通しは軒並み大幅に上方修正されつつある。3ヶ月前と比較するとFOMC平均値(4Q/4Q)3.2%から3.7%へ、ブルームバーグ・エコノミストコンセンサス(CY/CY)は2.5%から3.2%へ、ドイツ銀行(4Q/4Q)は3.3%から4.3%へ、等となっている。

1994年型の金融パニックのリスクはある

それでは②の可能性はどうだろうか。一時的に株高が頓挫する場合、きっかけはインフレ懸念の台頭でFRBの金融引き締めが遅れている(behind the curb)と市場が判断し、長期金利が急上昇するケースであろう。それが悪い金利上昇と受け止められれば、株価調整の口実となり得る。1993年までの金融緩和からの出口の顛末が想起される。1994年2月の利上げ開始から始まった1994年の国債暴落(長期金利は1993年11月の5.2%から1994年11月の8.0%へと急上昇)は、カリフォルニア州オレンジ郡のデフォルトやメキシコ通貨危機(テキーラショック、1994年12月)を引き起こした。パニックの終焉により長期金利はその後5%まで低下し、一年間停滞した株価は再度の上昇トレンドに入った。1994年の金融パニックは、実体経済には影響しなかったわけである。今回も、投資家のデフレからインフレへの心理の急変化による群衆行動が、市場を一時的に大きく揺さぶる可能性はある。

アメリカより危険な日本

国債からの大脱走、金融パニックが起きた場合、日本市場はより大きな影響を受ける可能性がある。第一に、「リスク回避=国債依存のポートフォリオ」は米国の比ではない。図表4に見るように、家計・年金・保険各セクターの資産保有比率を日米で比較すると、日本の債券や現預金保有比率の高さが際立っている。そこからの大脱走のマグニチュードは甚大となるかもしれない。第二に、米国の長期金利上昇は円高の顕著な修正をもたらし日本のデフレ終焉、リスクテイク開始、円キャリートレードの開始などのポートフォリオ変化を連鎖的に誘導する。日本国債の売り圧力は米国以上となるだろう。投資家は、「過度のリスク回避」に最大のリスクがあることを認識するべきであろう。それ自体、日本株にはプラスの要因である。


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