2011年6月13日
ストラテジーブレティン (45号)
金高は株高の先行指標
~30年ぶりの超金高は長期株高の前兆~

ファンダメンタルズと政策により株高回帰へ

バーナンキFRB議長をして、がっかりするほど(frustratingly)と言わしめた米景気の回復力の鈍さが今年も5月以降の株式市場の調整をもたらしている。ギリシャ危機で震撼した昨年ほどの急落ではないが、2002年以来最長の6週連続の株価下落である。ただ、現在の米国景気減速は一過性のものであり、年後半は再加速する公算が強い。株価調整はあと数週間と考えてよいのではないか。しかし仮に回復力の停滞が続くようならQE3及び追加的減税(雇用減税が検討されている)などが打ち出され、その場合でも株高基調が回帰するだろう。私は相当の確率で米景気の減速は一過性と考える。

金価格の上昇はFRBに対する信認の現れ

市場のFRBに対する強固な信頼、つまりFRBが金融緩和により株高を持続させ持続的景気回復を実現するという確信は、金価格の騰勢持続に現れている。2011年2月以降長期金利は低下し株価も調整色を強めているのに、金だけは上昇を続けている。金の値上がりがインフレの予兆でないのは、長期金利が低下し、金以外の商品価格(石油、銅など)が調整していることから明らかである。ファンダメンタルズに現れたデフレ懸念をFRBがoverrideできる(覆せる)と考えられているからこそ、金が上昇していると考えられる(下表の①のケース)。つまり金高が続く限り株高基調は持続すると考えられるのではないか。過去5年間で唯一金価格が大きく下落した2008年はデフレ懸念が強まる中で、FRBのデフレ制御能力が不安視されていたためであった(下表④のケース)。

金価格のマトリックス

<金価格上昇> 
①景気停滞 ⇒長期金利低下⇒FRBの金融緩和⇒株高   デフレ懸念だが当局信認
②景気拡大 ⇒長期金利上昇⇒株高           インフレ期待高まる 
<金価格低下>
③景気拡大 ⇒長期金利上昇⇒FRBの金融引締め ⇒株高 高インフレで引締め懸念
④景気後退 ⇒長期金利低下⇒FRBの能力に疑問 ⇒株安 デフレ制御不能の懸念 

30年ぶりの金高騰は長期株高の前兆か

こう考えると、今や金が米国株式、経済の先行指標と考えられる。今後、上表の①から②、③へと進展して行くのではないか。まず経済が不振でもFRBによる追加金融緩和でカバーできると市場が考えれば金価格は上昇する(①)。現在はそのケースである。次いで経済が順調に拡大しインフレ期待が高まれば金価格は同調する(②)。しかし更に景気が過熱し金融政策が大幅な引締めに転ずれば、金価格は下落に転ずる(③)。その場合でも株高基調は続くと考えられる。

より長期のトレンドで見ても金価格は市場と実体経済変化の予兆であった可能性が強い。図表3に見るように1980年の金価格急騰は、1980年以降の20年間の長期株高の起点となった。金価格の急騰にみる貨幣購買力の増大が長期経済繁栄をもたらしたのである。詳細は別に論ずるが、今回の30年ぶりの金価格上昇も、この先の長期経済繁栄と株高の予兆とも考えられる。

米国景気減速は一過性

米国では今年前半、①東日本大震災によるサプライチェーンの遮断、②政府(特に地方と国防)支出と雇用の削減、③原油価格上昇、④悪天候など、景気減速要因が集中した。しかしいずれも一過性であり、下半期には成長押し上げ要因となる。加えて住宅に底入れサインが出始めた。6月9日Finantial Times紙は昨年4月の住宅取得減税打ち切り以降初めて住宅価格が上昇(全米26都市中24都市で)し、客足が増え始めたと伝えている。サンディエコの不動産業者は「20万から30万ドルのエントリーレベルの住宅はとても買いやすくなったので、実際動いている」と述べている。個別散在需要の変化はこうした曙光から始まる。住宅価格は取得能力から見て著しく割安であること(図表4)、1.3億戸の住宅ストックに対して通年空戸数1420万戸(2011年3月末)とトレンド線より100万戸ほど多い(図表5)が、それは年平均の世帯増加100万世帯、現在の縮小した住宅新規建設50万戸などを考慮すると早晩解消されること(図表6)など、底入れの条件は整いつつある。


日本株投資の好機到来へ

日本では震災の復旧は予想されたとおり急ピッチで進み、秋口には震災前の生産水準に戻ることはほぼ確実である(図表8)。第二次補正予算のめどがつく8~9月以降復興需要が本格化してくる。また、緊急の流動性供給も待ったなしである。平時では小出しであったリフレ政策が本腰を入れて行われていく。日本の景況は急回復するが、株価は上場株式の6割がPBR1倍以下と言う空前の低バリュエーションである。また菅首相退陣により新たな司令塔ができ、震災復興対策が加速することも好材料。増税路線、日銀の消極姿勢など懸念はあるものの、著しい低バリュエーションの日本株の新たな悪材料とはなりにくい。7月以降、世界株式のサマーラリーがスタートするとして、その中心が日本株となる可能性は高い。

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