2014年05月23日

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ストラテジーブレティン 第120号

日本株潮目の転換へ
~Enough is Enough 、悲観論はもうたくさんだ~

5~6月株の仕込み場、年後半アベノミクスの現実相場に
2013年5月23日の日本株式急落から1年が経ち、いよいよ再騰勢が始まると考える。2012年11月から2013年5月における日本株の80%の値上がりはアベノミクスの期待相場であった。これから起こる株価上昇はアベノミクスの現実相場、アベノミクスがもたらすファンダメンタルズの改善を織り込むものであり、年末にかけ18,000~20,000円への上昇が期待できると考える。年初来、日本株は14%の下落 と主要国中最悪のパフォーマンスであった。米国株式は史上最高値圏、懸念されていたトルコやブラジルなどの新興国も軒並みプラス圏の中での一人負けである。世界で最も積極的な金融政策が実施され、ファンダメンタルズの変化のモメンタム(デフレからインフレへ)が最も大きく、企業収益増益率70%と世界最高の環境にある日本株式のこの低迷は、極めて意外のものであった。

 

しかし想定される限りのマイナス材料はことごとく消えつつある。むしろこれから、過大懸念の修正が起きると思われる。

 

① 海外情勢不安: 新興国の金融不安、ウクライナなど地政学不安、米国の経済減速と金融緩和縮小によるリスク資産売り、中国失速などが懸念されたが、海外各国の株式価格は堅調で、それらが過大であったことを示唆している。米国長期金利の低下をリスク回避の兆しととらえる人がいるが、それは正しくない。むしろ過度の債券ベアによる米国国債売り(ショートポジション)の解消によるもの。ポジション調整完了とともに緩やかに上昇に転じよう。米国長期金利が低位安定している背景には、着実な景気・雇用の回復と緩慢な資金需要の拡大というミスマッチがある。それは資本生産性の上昇というポジティブなもの、というのが当社の見解である。


② 需給: 年初頭、昨年15兆円と一手買いした外人の売りと日本投資家不在により需給が著しく悪化した。しかし外国人のポジション調整は完了し、他方で日本の長期投資家が参入し始めている。特に6月に成長戦略の一環として実施されるGPIFの改革は年金、保険など多くの機関投資家の追随を引き起こし、大きな国内株式資金流入をもたらすだろう。すでに銀行のポートフォリオに変化が始まっている。3メガバンクの国債保有額は、2014年3月80兆円と前年3月比28兆円(▼26%)の減少となった。この資金は当面短期預金などに滞留しているが、いずれ株式を含むリスク資産と貸し出しに向かうだろう。外国人も再度日本株比率の引き上げを迫られるだろう。


③ アベノミクスへの懐疑、消費税不安: ファンダメンタルズの不安は一掃されつつある。消費税増税のマイナス影響は想定以下であり、今やデフレに戻るとしている観測者は僅少となっている。バイサイドエコノミストは大きな大局観の修正を迫られるだろう。 


④ 安倍靖国参拝批判、日米関係の軋み: 中国、ロシアの領土膨張政策、力による現状変更の意図が顕在化し、内外の安倍批判は大きく沈静化している。 オバマ大統領のアジア歴訪で安倍首相のスタンスに微修正もあり、安倍首相のナショナリスト傾向に対する懸念要素はむしろ軽減している。

 

懸念材料がなくなり、日本企業の史上最高益と日本株式の空前の割安感だけが残されている。日本株価の大幅な水準訂正が迫っていると思われる。

 
空前の円安ベクトル揃う、年末105~110円、2015年末115~120円へ
株価とともに円安傾向への着実な進展が予想される。為替水準を決める以下の3大要因のすべてが円安でベクトルが揃うなどということはかつてなかったことである。加えて日本円固有の通貨高要因であり続けた地政学要因(覇権国である米国の国益)が円高から円安へと転換している。長期ステディーな円安が続く環境にある。


① 中銀の貨幣増刷競争                      ➡ 日銀ベースマネー前年比5割増と世界最速
② 需給を決める貿易収支                   ➡ 最大黒字国から空前の赤字へ
③ long/shortを決める実質長期金利  ➡ 日本円世界最低かつマイナス
   + 地政学(覇権国米国の意向)       ➡ 日本経済復活は米国の国益にかなう


米国経済と雇用に対する過度の懸念、米国長期金利の低下を理由に長期円安傾向の中での小幅な円高が年初来続いていた。その主因はファンダメンタルズというより、積み上がった円ショートポジションの調整であったが、その解消もほぼ終焉したとみられる。長期ステディーな円安は、デフレ脱却と日本経済好循環の絶好の土台となるだろう。


過去最高水準の企業利益から起きる好循環
経済分析と将来予測において決定的に重要なのは企業収益である。なぜなら企業における価値創造が、雇用/賃金/消費/投資/株価の全てを決するからである。2014年3月期、過去最高水準の企業利益(上場企業で経常利益36%増、純利益73%増)が今後の好循環の起点になることはほぼ間違いない。企業収益を円安による一時的なものとみる見方があるが、それは極めて一面的である。過去最高の企業利益は、


① 日本企業の世界最大のリストラ/スリム化
 (➡ 損益分岐点の大幅低下とアベノミクスによる売り上げ増のギヤリング効果大)
② 日本企業の新ビジネスモデル(グローバル基盤)の確立
③ 技術開発投資継続による技術優位性の確立


によってもたらされた。これは一過性のものではなく、長期増益基調を支える基盤になることは確実である。
過去の円高デフレ下の困難な時期について、「失われた20年」という言い方が一般的である。しかし真実は「将来の基盤づくりをした20年」と言える。特に企業は20年前の完全に行き詰まった「コスト優位・輸出競争力ベース」のモデルから「技術・品質優位、グローバル生産ベース」のモデルへと大転換を見事に果たした。労働分配率の低下など労働者に負担を強いて獲得した超過利潤・余剰資金がモデル転換の原資となった。デフレ脱却、労働分配率向上により今度は労働者と内需関連サービス部門が恩恵を受ける順番となっている。


日経平均4万円(2020年)の可能性は十分にある、のである。

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