2010年07月30日

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ストラテジーブレティン 第22号

民主政権は豹変できるか

民主大敗は市場にとって好材料、55年体制を完全に清算

想定以上の民主党の大敗であった。再び衆参両院のねじれ現象が始まった。野党が同意しなければ予算以外は何も決まらない、政治不能の時代に突入する可能性が強まったとの悲観的な観測が強い。しかし民主党大敗が、今日まで引きずってきた55年体制を完全に終わらせ、日本に成熟した民主主義を根付かせる機会になる可能性もあるのではないか。二つの理由がある。第一に野党である自民党・公明党・みんなの党が拒否権を持つことになり、実現する政策は従来の民主党党是とは真逆の、日米関係重視、プロビジネス、成長重視とならざるを得ないが、それは日本経済と市場にとって望ましいものとなる。第二にかつての社会党や民主党に残っていた非建設的野党(反対のための反対、生産無視・分配ありき、歳入無視・歳出ありき、市場軽視)が一掃され、建設的政策論争を誘導することになる。

厚顔の党是大転換が進行中

鳩山政権は国民の改革願望から生まれた政権とはいえ、政策体系から見れば55年体制の無責任野党そのものであった。しかしそれを引き継いだ菅政権は、驚くほどの厚顔さを以て豹変しつつある。アンチビジネス姿勢の下で冷え切っていた経団連との協議を開始した。鳩山政権のつまずきを経て、政権担当直後に日米同盟の重要性の認識を改めて表明した。また税制改革、法人税率の引き下げを25%と具体的に提起した。さらに欠落していたとされる成長戦略を打ち出した。他方で国民新党との間で合意していた郵政再国有化・郵貯預金限度額引き上げといった郵政法案はどうやら流産しそうである。また社民党が強く主張してきた労働者派遣法改正の断念、子供手当満額支給の撤廃、などアンチビジネス政策やばらまき政策の是正傾向が表れ始めた。そして自民党政策を乗っ取るかのような10%消費税増税の提起である。

野党政策のまる飲みが唯一の選択肢、これはポジティブ

こうなると与野党の政策の相違が著しく小さくなり争点が見えなくなってくる。①デフレ脱却・成長の復元、②行政改革、③財政改革・国家債務削減のプラン、④グローバリゼーションに対応した日米関係の再構築など、誰が考えても緊要とされる課題を、小異を捨てて一気に推し進める実行力が求められる。その際金融危機の記憶がよぎる。1998年金融危機のさなか、やはり衆参ねじれ現象の中、菅党首の下での当時の野党民主党は金融を政局とせずとして、政策新人類を立役者とし、金融危機の処理と金融制度改革を推進した。ここは民主自民大連立などの奇策によって局面打開を図る知恵が求められる。

フランス・ミッテラン政権の成功例

民主党はフランス・ミッテラン社会主義政権の成功体験を踏襲できるだろうか。1980年代初頭政権に就いた社会党ミッテラン大統領は当初、社会主義的理想主義の下で、産業の国有化、富裕者や企業の層への課税強化、低所得層への所得補填、など様々な反市場的政策を打ち出した。しかしそうした社会主義的政策が景気低失速とインフレーションに帰結するや、それらを打ち捨てて正反対の自由主義政策に転向し、減税や社会保障の削減などを打ち出し、その後の長期にわたる経済回復を実現した。そしてついには保守系のシラクを首相に登用し保革連合体制を築き上げた。今日の日本の現状は当時のフランスに酷似しており、菅首相をはじめとする民主党リーダーの手腕次第で、ミッテラン改革の成功体験を踏襲することが可能である。

各国政策の選択肢は小さい

いずれにせよ民主党は根底から党是を転換せざるを得ない。グローバリゼーションの進展により、企業・個人が国家を選ぶ時代となり、各国政府の選択肢は著しく狭まった。安全保障、民主主義、市場経済の徹底により自国経済と自国の企業、個人をグローバル競争の中で有利な立場に立たせること、が至上命題である。ここは野党政策をまる飲みしてでも局面打開を図る時である。

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