2011年04月04日

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ストラテジーブレティン 第42号

海外投資家と交流して  
~コンセンサスとなった日本株強気論~

海外投資家歴訪

先週一週間、海外投資家を訪問してきた。私の主張は、①米国経済は力強い持続回復軌道に入りつつあり、米国金融政策の変更が年末以降視野に入ってくること、②日本経済も震災の悪影響は年半ばで一巡し、年後半以降成長力が高まること、③G7協調介入は劇的に円高を転換させ、年末90円/ドル、一年後に100円/ドルが視野に入ってくること、④今年で日本のデフレが終焉し日経平均は2013年に2万円が想定されること(3年間年率3割上昇)、であった。

驚くほどの日本株強気のコンセンサス

最も強い感想は、コンセンサスが驚くほど一致していたこと、①日本株式の異常なほどの割安さ、②日本企業(特にグローバル企業)の高競争力・力強い収益力回復に対する評価、③米国経済回復の自信、④円安への確信、⑤日本株式の中長期上昇シナリオ(もっとも目先の株価に関しては震災の影響を確認するべきという慎重意見も多かった)、等である。これは私の主張とまったく一致しており、説得に大きな困難はなかった。また地震で見せた日本人の協調性・社会性に対する賞賛、日本に対する支援心も特筆される。ほとんどすべての投資家から丁重なお見舞いの言葉をいただいた。少し前までのジャパン・バッシング、ジャパン・ナッシング、ジャパン・パッシングといった批判要素は全くなくなった。日本の強さに対するねたみはなくなり、日本の品質・技術・世界市民としての振る舞いに対する尊敬が著しく強まっている。 これほどの一致が見られているということは、市場が大きく上昇する前触れであると感じられた。日本株式の割安さの指摘は、ファイナンシャルタイムズ紙やウォールストリートジャーナル紙なども大きく取り上げ始めている。

ステレオタイプ化した共通懸念

他方指摘された懸念も驚くほど、共通していた。①財政赤字が長期金利を跳ね上げ経済の破局的悪化をもたらさないか、②人口減少・少子高齢化、③政治の不安、④企業の一部になお残る株主無視のコーポレート・ガバナンス、⑤国内投資家の消極性、などである。これらはいずれもステレオタイプ化した、概念的なものであり、nothing newであるゆえ、株価にはすでに織り込まれていると言うのが、私の説明であった。

それぞれについて私の見解

① 財政赤字問題

改革は必要だが、緊急性や破局的悪化の可能性はない。財政赤字がコストを先送りしているという見解は誤りである。財政赤字のコストは預金者がゼロ金利という形で日々すでに負担している。日本の財政赤字の約95%は日本国民によってファイナンスされているので、将来の金利上昇は財政負担の増加になると同時に、そのまま家計の金利収入の増加となる、つまり国民経済的には中立要因である。それ(将来の金利上昇)は政府部門に改革を促す一方民間経済を活発化させるので、むしろ株式市場にとって望ましい。財政赤字のもっとも大きな原因はデフレによる税収減と歳出の硬直性(デフレでも社会保険給付や公務員給与は下がらないこと)にある。脱デフレが財政赤字削減の最重要課題である。

② 人口減少・少子高齢化

人口減少の問題は労働力減少と市場の狭隘化の二点に尽きる。それはいずれもグローバリゼーションの進展によって解決できる。海外労働力の活用は過去20年の日本企業が実践してきたことであるし、海外市場特に急速に所得が高まるアジア市場は高品質・ブランド力に勝る日本企業の有力なターゲットとなっている。日本企業はその技術・品質・ブランド力の優位性故に、有利な交易条件を維持している。

③ 政治不安

これ以上の悪化は考えられない、むしろ改善されれば大きなポジティブサプライズになるだろう。2009年までの不毛な55年体制は、強引に図式化すれば、良い政策(自由主義市場経済尊重、日米同盟重視、企業活動支援)かつ悪い目的(利益誘導)の自民党と、悪い政策(市場軽視・弱者救済ばら撒き・企業批判・日米同盟軽視)かつ良い目的(利益誘導せず)の野党(社会党・民主党)の対抗であり、議論はまったくかみ合っていなかった。しかし民主党が与党となり、自民党の利益誘導が断たれた、と同時に民主党の政策がことごとく破綻していることが白日の下にさらされ、民主党はマニフェストの全面改定を余儀なくされている。政策はほとんど自民党のそれを丸呑みする状態にある。いよいよ正しい政策が正しい目的の下で遂行される条件が整っているのである。近い将来予想される大連合または政党再編は極めて適切なものとなるだろう。

④ 株主無視のコーポレート・ガバナンス

厳しい円高と貿易摩擦に鍛えられて、日本の製造業のガバナンスが著しく向上したことは、すべての投資家が認めている。いまだ旧態依然たるコーポレート・ガバナンスの企業も今後大きく改善していく可能性は十分ある。また社内に流動性を溜め込み配当に消極的なのは、懸念と警戒が大きいからである。デフレが終わり将来の透明性が高まれば、配当は大きく増加していこう。かつて異常な現金の溜め込みにより海外投資家の非難の象徴であった富士フィルムはその流動性を活用し、写真フィルムという主力商品が壊滅した後も、他の収益の柱を育てて、収益力が維持された。このように買収資金や研究開発原資を保存するという意味で、潤沢な流動性は企業を大化けさせる可能性を持っている。

⑤ 国内投資家の日本株に対する消極姿勢

日本の国内投資家は過去20年のベア市場で意気消沈しリスクテイクのアニマルスピリットを喪失している。加えて、規制や合議制主体の意思決定により、アクションが遅れがちである。結果としていつもlate comerであり、底値売り高値掴みの傾向が強かった。今回もそうであるとすれば、新年度入り以降の株価上昇定着により、日本人投資家も活発参戦すると見込まれる。

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