2011年07月04日

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ストラテジーブレティン 第46号

日本株式のキャッチアップ・ラリー

サマーラリーが始まった

米国株式に意外な力強さが感じられる。先週、S&P500指数は5.6%、ダウ工業株は5.4%と過去2年間で最高の上昇となった。長期金利の反転と同時に進行する株高は2ヶ月続いたrisk off trade の終わりを示唆しているのかもしれない。益回りと実質長期金利との差をリスクプレミアムと考えると、米国株式も(日本株ほどではないが)十分に割安と言える。ギリシャ問題も財政緊縮策の成立と借り換えの実現により、緊急のリスク要因ではなくなった。

長期景気拡大の緒にある米国経済

米国経済soft patch(景気の踊り場)の終焉が見えてきた。東日本大震災によるサプライチェーンの復旧が進展し、製造業の景況感が改善し始めている。米国経済はアコーディオンに例えれば、一番圧縮された状態であり、これ以上収縮する余地はあまりない。それは、図表1の米国のGDPに対する 裁量的支出(当面我慢可能な支出)の割合が過去最低であることから分かる。人々は極端な不安心理にさいなまれる時、当座に必須のものだけを購入する。しかしより自信が強まってくれば購買品目を、食料→衣料→家電→車→家具・住宅へと、より長期耐用分野にシフトさせる。また企業は最小限の維持修繕投資から増産投資へ、新分野投資、長期耐用資産投資へとコミットメントを長期化させる。このようにして人々がより長期をにらんだ購買や投資を行うことにより、需要に厚みが生まれるのであるが、今の米国はかつて無く短期志向が強まり需要が薄っぺらになっている。それは経済にアップサイドの圧力が蓄積されていることを物語っている。

震災復旧を機に日本株式のキャッチアップ・ラリーへ

それにしては日本株、日本投資家不甲斐なさが際立つ。日本株式は一人負け状態にある。世界の株価がリーマンショック後ボトム比2倍へと鋭角上昇したのに、日本株はTOPIXで2割、日経平均で4割の上昇にとどまっている。リーマンショック後の異常円高によるデフレ再来に加えて、震災の打撃がダブルパンチとなった。しかし、この日本株の出遅れをもたらしている2要因が2011年後半から大きく転換する、となると今後日本株のキャッチアップ・ラリーが実現する可能性が強まる。

不甲斐ない日本の株式と投資家

日本株式市場の不甲斐なさは、持ち株比率2割の外国人が出来高では6割を支配していること、この期に及んで年金、生保など日本の機関投資家が、引き続き日本株式組み入れ比率を引き下げていることに如実に現れている。年金や保険などの機関投資家の株式組み入れ比率を図表7によって見ると、日本投資家の組み入れが著しく低いにも関わらず、である。この異様としか言い様が無い光景の理由は、第一に、過去の投資失敗の後遺症、リスク回避が習い性になっていること、第二に、横並び志向と規制に縛られる投資行動による。このように悲観バイアスが極端に強い日本市場につかっていると、米国株式の先週の上昇が不思議とすら思えてくる。しかし日銀短観や工業生産予測、自動車各社の増産計画などに見るごとく、震災後の日本の生産回復は驚くほど鋭角的である。実はsoft patch(景気の踊り場)からの脱却は日本が主導しているのだ。

いずれ怒涛のバリュエーション修正が起きる

日本の株式益回りは7%、長期金利は1%、差し引き6%のプレミアムがある。このプレミアムは、歴史的にも諸外国との比較でも極端に大きく、日本株の割安さ(価値と価格とのギャップ)を示している。この6%のプレミアムは「値下がり準備金」と考えられるのではないか。過去20年間で株価は3分の1に下落した。それは年率5%のペースであり、投資家は5%の値下がりを織り込んだ価格を求めていると考えられる。しかし、これ以上の値下がりが無いところまで株価が低下したとすると、この5%の「値下がり準備金」は投資に対する超過利潤となる。いずれ、のけ者だった日本株式が、一転、世界の投資家の垂涎の的となるだろう。 株式時価総額の対GDP比率(図表5)、やPBRの日米推移(図表6)を見ても、日本株式の著しい割り負けは明白である。目先に留まらず、中長期的な日本株式のキャッチアップ・ラリーが起こる条件が整っている。

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