2010年09月15日

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ストラテジーブレティン 第30号

潮目の変化③
投機の円高は終盤に
~為替介入=「グローバル・デフレ・シナリオ」との戦いは国際理解が得 られる~

ついに政府・日銀が為替介入に踏み切った。この介入は単独介入であり、米国がドル安を志向していると思われることから、円高トレンドの転換は困難、との見方がコンセンサスのようである。しかし当社は、米国当局の強い支持により為替介入は成功し、円はピークアウトする可能性が強いと考える。

理由① 米株ショート・円ロングポジションの巻き戻しは米株高に

これまでレポートしてきたように経済実体から離れた円高の原因は投機である。その根拠は「グローバル・デフレ・シナリオ」。世界の投機家は「グローバル・デフレ・シナリオ」の下で、リスク資産売り・円買いのポジションを積み上げていると推察される。リスク資産の代表は米国株式である。つまり円高は米国株安とともに進行してきたのである。従って円高ピークアウトは、「グローバル・デフレ・シナリオ」ポジションの巻き戻しにより、米国株式を大きく押し上げることとなる。

理由② 円高阻止はデフレと闘っている米国当局にとっても利益

米国当局は総力を挙げてデフレと闘っている。株価上昇は、心理改善→消費回復→生産回復→雇用回復という、景気回復サイクルを定置するうえで必須である。景気指標の極端な悪化が起きない中で予想されているFRBの追加金融緩和は、後追いではなく予防的なものである。その狙いは期待(心理)の改善、つまり株高にあることは明白ではないか。追加金融緩和の目的は、ひとえにリスク回避にシフトしそうな市場・経済心理を再びリスクテイクへと、鼓舞する目的があると考えられる。円売り→米国株高の経路での心理好転効果を米国当局は歓迎するはずである。

理由③ ドル買い介入は米国金融緩和に直結

円高は米国から日本に資金を吸い上げていることを意味する。従って円投機を抑制し日本から米国に資金を還流させることは、世界デフレへの悪循環を断ち切るうえで重要である。仮に日本が為替介入で30兆円、3500億ドルの米国国債を購入すれば、現在検討中のFRBの追加金融緩和策を大きく支えるものとなる。円高阻止の国際協調の構築は日本のエゴではなく世界の利益なのである。2003年の円高阻止の30兆円の巨額為替介入は、日本から世界への流動性の供給となり、世界経済を活性化させ、更にはバブルをもたらしたとの評価がある。日本の為替介入→円安→円流動性の供給→日本株高という展開が実現できれば、世界デフレ阻止に貢献する大きな力となるだろう。

理由④ 中国の為替操作に対する批判

先週金曜日のフィナンシャル・タイムズ(アジア版)、ウォールストリートジャーナル(アジア版)のトップ記事は、ともに日中緊張であった。FTは「日中緊張高まる~北京の日本買い急伸の真意を探る~」、WSJは「日本は円高で中国を非難」である。円高の主因の一つは中国の外貨準備による日本国債買いであることが指摘されている。中国の為替操作に批判を強めている国際金融世論は、円高に同情的である。中国が自国市場を閉ざし一方的に日本国債を買い円高を誘導しているとすれば、それは典型的近隣窮乏化政策である。中国が減らしているドル保有ポジションを日本が為替介入で補うことは、当然なことと受け止められる環境が熟成している。

理由⑤ 円高はファンダメンタルズから見て不当である

今の円高は不当であり日本の国益を著しく損なっている。OECDの相対物価比較統計によれば、日本円は対ドル比45%の過大評価(日本と輸出市場で競合しているドイツは11%の過大評価、韓国は24%の過小評価)となっている(2010年7月)。その後の円高で現状では50%の過大評価と見られる。これは世界を不幸に導く「グローバル・デフレ・シナリオ」にもとづく投機による極端な値であり、その是正に各国の理解は十分に得られるはずである。

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