2025年12月31日
ストラテジーブレティン 第394号
謹賀新年 ナショナリズムの覚醒が日経平均を65000に押し上げる
謹賀新年
良き新春をお迎えのこと、お慶び申し上げます。
期待に胸が膨らむ新年、皆様のご発展をお祈り申し上げます。
令和8年 元旦
株式会社 武者リサーチ
(1) 中国の国力充実が西側を圧する
緊張感が高まる新年を迎えた。米中対立、AI革命の進展、日本株式5万円までの大上昇は昨年新春に予想した通りであった。しかし重大な誤謬も犯した。それは中国強大化の軽視である。この対中過小評価で最も衝撃を受けているのは世界秩序の盟主米国とトランプ大統領であろう。今戦端が開かれたとして、米国に勝ち目はない。軍事力、工業力、人民を戦争に動員する統率力において中国は米国を圧倒している。米国の勝ち筋は目先の暴発を回避し持久戦に持ち込むことにより、中国の弱体化を誘導する以外にはない。
2025年の驚くべき情勢展開は、中国の劇的台頭、強大化に起因すると言っても過言ではない。ウクライナ戦争における侵略者ロシアの勝利(ウクライナからの領土略取)、専制国家中国・ロシア・北朝鮮の枢軸形成、米国の対ロ融和、米欧の軋轢、世界工業力(サプライチェーン)の中国支配(図表1参照)、中国の対日威圧等、悪夢のような危険事態が今の現実である。鄧小平氏の韜光養晦(爪を隠して力を蓄え時期を待つ)の時代を経て、習近平氏の中国は世界の覇権国としての野望をあからさまにしている。
中国強大化は全く必然ではなく、米国、欧州など先進国の侮りと油断の産物であった。具体的には、①中国の経済成長が民主化をもたらすと期待した対中支援、②人権・環境・後発国に過度に配慮する理想主義、③西欧的価値観を人類の最高の到達目標とする優越意識など、現実離れしたイデオロギーが政策を誤らせた。過去50年間の政策は、冷戦が終わり米国の世界唯一のスーパーパワー体制が永続する(「歴史の終わり」)との予見に基づくものであったが、結果は期待とは全く逆であった。
この新しい現実の下ですべての戦略・政策が再構築されなければならない。トランプ政権の、強権的で唐突に見える政策の多くはこの現実に対応したものである。
世界は弱肉強食の時代、米国は世界戦略を根本転換
共産党一党独裁、全く言論の自由なく高度のテクノロジーによって国民の一挙手一投足が監視されている中国が、米国とともに世界を統治する時代、G2が現実となった。ジョージ・オーウェルが小説「1984年」で描いたデストピアがそこに存在している。いまのところ中国市民が大きな抑圧感を意識しておらず、物質的な豊かさがある「幸福な被監視」状態にあり、小説中の悲惨感はない、と言われている。しかし香港の民主主義制圧に見られるように、経済悪化が進行すれば、より強権抑圧を強める可能性は高い。
米国は2025NSS(国家安全保障戦略)を発表し、これまでの米国の世界戦略を完全に否定した。「米国の能力を過大評価し、グローバリズムと自由貿易に誤った破壊的賭けをした・・・その結果米国の力、富、良識の礎となった国家の特質が損なわれた」と総括した。中国のロシア原油購入、西側から禁輸されたロシアへの工業製品の一手供給などの支援がなければ、ロシアの戦争継続は不可能だっただろう。また米国は3大核保有大国のうちの2か国中露同盟を敵に回して戦えるだけの余裕はなく、望ましくなくても、対露宥和以外の選択肢はない。トランプ政権が危機感と当事者意識が希薄な欧州にいら立つのも、現状認識の差に起因する。
2025NSS(国家安全保障戦略)は「神から与えられた自然権と国民の福祉と利益を守り、世界大戦を回避するためには、1.国家利益最優先、2.強さによる平和=最強の経済・技術・軍隊をつくる、3.リアリズムと勢力均衡(他国に介入しないが敵対的勢力の台頭も許さない)、4.不公平性を許さない(フリーライド、貿易不均衡、略奪的経済慣行)」、等がうたわれている。その具体策として、経済安全保障、貿易不均衡是正、再工業化とサプライチェーンの取り戻し・防衛産業の再生、エネルギー優位性確保・ネットゼロイデオロギーの拒否、金融優位の維持、が挙げられている。地域的には①米国の裏庭西半球におけるモンロー主義の再確認、②世界成長センターアジアへの関与と中国の台湾・太平洋地域での現状変更を容認しない、③欧州においては国民的アイデンティティーと自信の回復を促しロシアとの戦略的安定の再構築をはかる、等がうたわれている。
このように叙述は多岐にわたるが、その大半を貫くものは、中国の台頭を全力で阻止する、と言う決意と手立ての表明である。
中国のレアアース禁輸に屈したトランプ政権
こうした中にあって、トランプ大統領の10月30日の韓国慶州でのトランプ・習会談以降の対中友好姿勢への転換は奇妙であった。2026年の相互訪問、対中相互関税の大幅引き下げ、対中非難発言の抑制等、融和姿勢のオンパレードである。11月7日の高市首相の台湾有事発言以降の、中国の対日威圧に対してもトランプ氏は全く非難しない。中国が世界シェア90% を握るハイテク製品生産に必須の素材、レアアース(希土類)の供給停止の脅しに屈したのである。ハイテク生産が止まれば2026年に米国はリセッションに陥り、中間選挙での勝利はおぼつかなくなる。中国の工業力の前に、トランプ氏の選択肢は、屈辱的方針転換以外になかったのである。トランプ氏は米中2国をG2と称し、中国が主張してきた世界を仕切る2大国というステータスを初めて認めた。
2025NSS(国家安全保障戦略)で謳われた政策の実施が危ぶまれる事態である。第一次トランプ政権から続いてきた中国抑制政策は大きく変わったのだろうか。そうではないだろう。致命的と見なされる中国のサプライチェーン依存脱却を、一刻も早く遂行する決意を強めたはずである。
先進国で戦略転換が進む、理想主義からリアリズムへ
トランプ政権の、1.国家利益最優先、2.強さによる平和=最強の経済・技術・軍隊をつくる、3.リアリズムと勢力均衡(他国に介入しないが敵対的勢力の台頭も許さない)、4.不公平性を許さない(フリーライド、貿易不均衡、略奪的経済慣行)、」は欧州はじめ先進国で共有されていくだろう。
2025年2月14日のヴァンス副大統領によるミュンヘン安全保障会議での演説は、欧州同盟国に大きなショックを与えた。ヴァンス副大統領は欧州連合(EU)の指導者たちを批判し、言論の自由と民主主義が後退していると指摘した。またウクライナにはロシアより大きな制約があるので現実的には交渉で戦争を終わらせるしかない、と対露宥和を説き、欧州を慌てさせた。更に衝撃的であったのは、2月28日のホワイトハウスでのトランプ大統領とゼレンスキーウクライナ大統領との会談である。ゼレンスキー氏に事実上のロシア占領を容認したうえでの停戦を強要したシーンは、全世界に報道された。米国のウクライナ支援政策の大転換により世界は茫然自失状態に陥った。
しかしその後の欧州の対応は米国に呼応するものとなった。リアリズムに依拠し、国防予算大幅増額、ドイツでの憲法改正と財政均衡主義の放棄、対露・ウクライナ巡ってのEU内部での対立、ゼロカーボン政策の見直し、対中抑制策の強化などを余儀無くされている。トランプ政権が信条の共有を隠さない、反移民政策を掲げる右翼ポピュリスト政党の更なる台頭も考えられる。
日本の政策軸の変化もその流れの中にある。史上初の女性首相高市政権の誕生を機に、保守革命が進行しようとしている。これまでの自公連立はリベラル中道連合 (憲法改正やスパイ防止法、防衛力増強などを後回しにしてLGBT法や選択的夫婦別姓などリベラル政策と財政健全化路線を推進)と言えるものであった。それに対して自民維新の新連合は保守連合(改憲、自主防衛、積極財政)と言え、これは保守革命ともいえる基軸の大旋回である。中国の異常とも見える対日威圧も、日本の保守革命に端を発している。
(2) 地政学対決棚上げ、米中経済パフォーマンス合戦が進む
米国は表面的には軍事・地政学対決を棚上げし、米中経済競争に精力を注ぐ。国力の維持可能性を担保するのは経済力であり、米国はその強化に賭ける。中国のアキレス腱が経済にあることは、以下説明する通り明らかだからである。米中の経済モデルは対極にあり、短期的に東風が西風を圧するように見えても、米国の優位性は明白であろう。
閉塞の中国の近隣窮乏化的経済モデル
世界人口の17%に過ぎない中国は世界製造業生産の4割弱(米国の2倍強・・・PPPベース武者リサーチ試算)を集積し、鉄鋼5割、造船7割、スマホ、ドローン8割、PC、TV9割の高世界シェアを獲得している。特にグリーンエネルギー関連ではソーラパネル、EV、バッテリー、風力発電設備などで世界シェア6~8割と圧倒し他国の産業基盤を破壊している。更に米国から輸出規制をかけられてきた半導体では過去数年間、世界の半導体設備投資の3~4割と言う高投資を続け、パワー半導体、アナログ半導体、DRAMなどのレーガシー半導体と言われる分野で著しく競争力を強め、各国への低価格供給を始めている。また新質生産力におけるニュートリオと言われている太陽光パネル、電気自動車、リチウムイオン電池の輸出の大幅増加が、国内需要の低迷をカバーしてきた。自動車までが、日本を抜いて世界最大の輸出国になった。この過剰な供給力が中国国内だけではなく全世界にデフレ圧力を及ぼしている。2025年の中国貿易黒字は1兆1500億ドル程度(1~11月で1兆758億ドル)と世界GDP比1%の巨額に達した。
他方不動産バブルの崩壊とデフレ化、失業率の高まりにより将来不安が募り、家計は一層貯蓄に励む。中国の貯蓄率は総貯蓄率で43%(2024年)、家計貯蓄率で36%(2023年)と他国に比べて突出して高い。過少消費➡過剰貯蓄➡過剰投資、のサイクルがもたらす巨大な過剰工業力は中国の歪んだ経済構造の賜物である。世銀の調査による主要国の家計消費のGDPに対する割合を見ると、中国は38~39%で推移している。一方、中国の固定資本形成はGDPに対して40%強であり、投資よりも消費のほうが小さいと言う他に例のない異常な経済構造が長期にわたって続いている(図表2参照)。
世界にデフレを輸出している中国対する批判高まるが、消費主導の経済モデルへの転換は絶望的である。第一にバブル崩壊はまだ入り口、トンネルの先に出口は全く見えない。日本の地価下落はピークから8割減まで低下し、膨大な不良債権コストが企業や家計の購買力を奪ったが、中国の下落は未だ2~3割程度、不良債権の顕在化も破綻処理、コストの発生もあまり起きていない。弥縫策によりカオス化は抑え込まれているものの、先安観、雇用・景気先行き不安がかさみ、消費増加どころではない。第二に不良債権処理と消費テコ入れのために財政への負担急増はとても吸収できない、現時点ですら、中国の財政赤字は急拡大し対GDP比7%(2025年OECD推計)と主要国中最悪になっている。第三に企業収益と雇用の悪化、賃金の下落、の下では可処分所得増加が望めない。
となると更なる対外投資増加しか解はない。大幅な貿易黒字で稼いだ外貨の投資先として、一度は萎みかけた一帯一路などの海外投資を再拡大させグローバルプレゼンスを高めている(図表3参照)。この資金力を使っての軍事力増強は世界に緊張を高めている。中国の国内で循環しない経済モデルは、レーニンが批判した19C末から20C初頭型の帝国主義そのものであり、対外膨張を必須とする近隣窮乏化体制そのものである。
信用拡大(含株高)・消費主導の米国経済モデル
中国の巨大工業力、AI化による生産性の向上により、世界が供給力過剰に直面しているときに必要なのは「消費する力」、「需要を作る力」であり、それを持つのが米国である。米国の消費が世界の救世主として存在し、益々、それが重要になっていく。米国の消費のGDPに対する比率は、1970年の時点で60%であったが、今では68%となっている。他国の消費の割合が下がる中、消費主導の需要圧力の強い仕組みを作ってきた。これが米国の本質的な強さであり、米国が世界の基軸通貨であり続ける理由もそこにある。世界が米国の消費に向けて輸出し、それによってドルという成長通貨を手にし、その結果、繁栄できるという循環が続いてきた。トランプ政権の貿易赤字縮小のアジェンダもこの好循環を壊すものではない。
資本主義の母国は米国である。英国は資本主義を作ったが、完成させることはできず、途中で米国やドイツに敗れ、英国産業は衰退した。海外での金融と海運で所得を稼いだが、国内投資はおろそかにされ、内需が育たなかった。米国は英国のような道を歩まなかった。国内需要を創造し、それが新たな産業の受け皿になった。国内の需要を作ったのは、米国の資本主義の最も重要な推進力である信用創造である。1.金本位制をやめ、2.財政拡大を行い、3.海外に対してドル供給を行い、それらの債務増加の全てを需要創造に振り向けてきた。米国政府のこうした需要創造(=成長至上主義)を正当化する根拠はただひとつ、国民の生活水準の向上である。この1点に米国の国益がかかっており、トランプ氏も常にそれを考えている。国民の生活水準が上がるかどうかで評価されるのが米国の民主主義である(図表4参照)。
米国は持久戦(対中依存を下げ中国の弱体化を待つ)に転換
中国と米国の対極の経済モデルは国が追及する目的、基本的価値の相違に基づく。米国のゴールは、アメリカンウェイオブライフ、飽くなき人民の生活水準の向上である。中国の場合「中国の夢」民族復興であり国際プレゼンスの引き上げである。
米中対決の最後の決め手は両国国民の国家に対する忠誠心、求心力である。米国の資本主義は人々を幸せにできているのか、選挙はその判定を問うものであり求心力を高める必須のプロセスである。民主主義は選挙により対中政策の手足を縛るので一時的に米国に不利に働く、とのコンプレインはあるがそれは小事である。選挙が無く抑圧的政府の下では、人民は無言だが、忠誠心が培われているか、疑がわしい。
米国株式資本主義対中国統制経済(no資本主義)のパフォーマンスの戦いにおいて、長期の帰結はほぼ明らかである。人々を幸せにしない中国モデルに展望はない。だが中国経済もここしばらくはレジリエンスを示すだろう。巨額の対外余剰と財政出動余地があり、何年何年も弥縫策を撃ち続ける弾丸はある。低迷状態が長期化したとしても、数十年前の極貧状態に比べれば今は天国であり、それを実現した共産党政権に対するクレジットもまた大きい。
(3) AI革命により経済の繁栄を持続できるか…陰の主役株式資本主義
困難な地政学環境にありながらも、米国経済は好調、株価も史上最高値を更新している。そのカギはAI革命と株式資本主義(=株高による信用創造)にある。米中経済持久戦に勝つためには、AI革命の遂行により米国民の生活水準を新たな高みに押し上げなければならない。現在の米国経済繁栄のモデルはそれが可能だろうか。多面的検討が必要である。
スマートフォンの世界需要がピークアウトし、ハイテクブームはいったん踊り場を迎えた。しかしチャットGPTの登場が事態を一変させ、2024年から米国経済はAI牽引の新たな成長フェーズに入った。牽引車GAFAMの直近の5社時価総額合計は15兆ドル、米国GDPの5割規模にまで増大した。たった5社の巨大企業の塊が、まるでスタートアップのベンチャー企業並みの目覚ましい勢いで成長を続けている 鍵はAIが引き起こす劇的生産性の向上にある。WSJは単位機能(=トークンつまり質問と応答)あたりの価格が、最低レベルのAIでも年率9分の1以上に低下しているとの報告を伝えている。2年で2倍の集積度の上昇(=2年で2分の1の価格低下)という半導体のムーアの法則とは桁が違う指数関数的(exponential)変化である。かつて電気やインターネットの普及が人々の生活とビジネスを一変させたがそれ以上の変化が起きることは間違いない。
このGAFAMやNVIDIA、オラクル、オープンAI、ソフトバンクなどのプレーヤーは経済金融のプラットフォームとしての株式資本主義に立脚している。まず図表5によりGAFAM5社を見ると、これまで利益の9割を自社株買いと配当によって株主に還元しきた。無駄な資本を貯めこまないためROEはおおむね60%前後の高水準で推移している。それにもかかわらず投資は自己資金(FCF)の範囲内であり、借入金はごく少なく自己資本比率は6~7割と高い。GAFAMが実現しているモデルは、利益の全てを株主に還元し、高株価により高い資金力を獲得し、高投資を続けることで高い利益成長を実現するという好循環である。
AI時代のエコノミクス➡初期投資急増/生産性上昇とホワイトカラー失業
当面データセンター投資などAI設備の初期投資が急増し、経済を押し上げている。またGAFAMなどのハイテク企業はAIを活用した新サービスを立ち上げ、利益成長を加速させている。しかしAIは市場調査、書類作成、グラフィックデザイン、プログラミング等ホワイトカラーの職を奪い労働需給の悪化も引き起こしている。増加する企業利益を如何に家計所得と消費増加につなげるのか、手立てが必要である。図表6はコロナショック後の月次家計収入と消費の増加趨勢(年率換算)を見たものだが、賃金は家計所得増加の半分に過ぎず、残りが配当・金利等の資産所得と財政支援によって賄われていることが分かる。この家計所得には資産売却益は含まれていないが、それを考慮すれば家計所得の株式関連所得依存度は2~3割を超えるだろう。家計が貯蓄を取り崩して消費を続けてきたのは膨大な資産価格上昇の評価益があったからこそである。このように余剰フローの主経路として株式市場が決定的な役割を果たしている。
また公的支援や減税による財政を通した所得移転が必須である。高資産価格を誘導し維持させる金融政策と、財政による需要圧力を高める高圧経済政策が必要になっていく。トランプ政権の金融緩和と減税に対するこだわりは、AI革命と中国からのデフレ圧力に対抗するためには、必要なものである。
GAFAM+NVIDIAの突出した株高をバブルと切り捨てる悲観論があるが、それは正しくないだろう。確かにSP500時価総額に占めるMag7のシェアは10年前の8%から32%まで上昇し、オーバープレゼンスに見える。また高PERで割高にも見える。マグニフィセント7(GAFAM+NVIDIA、テスラ)のPERは30倍と、SP500社22倍、Mag7社を除くSP493社18倍を大きく凌駕している。しかし、このMag7社の利益成長率は年率20%、SP500平均の利益成長は7%なので、Mag7の突出した成長が3、4年も続けばむしろ割安に見えるバリュエーションであり、決して割高と言えない。益回り=10年国債利回りをフェアバリューと見たバリュエーションモデル(FEDモデル)で見ると、現状は割安局面が終わりフェアバリューに戻った局面、1995年から1996年当時と同レベルのバリュエーションである。バブル崩壊を懸念するのではなく、むしろ積極的にリスクをとる場面であると考える。
ドルの信認に陰りなし、2026年も株高環境
信用創造に基づく需要創造の脆弱性を心配する向きは多い。財政赤字による金利上昇、貿易赤字など対外債務の増加によるドル信認の低下、株・不動産価格の下落などが景気後退や、経済繁栄モデルの崩壊すら引き起こす、と言う懸念は消えない。金利、ドル、株・不動産などの資産価格のコントロールは経済運営の要である。
執拗に上昇を続ける金価格がドル不安の高まりの現れ、との懸念があるがそれは正しくない。過去を検証すると金とドルとの連動関係は、2002年から2011年のドル下落が金上昇と一致しているにすぎない。ドルは米国の貿易収支(対GDP)との相関が強いが、米国貿易赤字は関税導入以降大きく減少しており、それはドル高要因と言える(図表7参照)。では金価格上昇は何によってもたらされているのだろうか。ドル決済から締め出されたロシアや中国の金保有の増加が第一の要因であるが、それ以上にドル信用の供給量と連動していると考えられる。1980年の金高はニクソンショック(ドル金交換停止)による信用増大、2011年までの金高はグラススティーガル法廃止による信用増大と照応している。では今米国で増大が進行しそうな信用とは何か、それは仮想通貨かもしれない。
トランプ政権の改革の中でも、際立つって歴史的意義を持つものは、ステーブルコイン革命であろう。将来から振り返った時に、新通貨制度の発明であった、と見なされるかもしれない動きである。2025年7月成立、2027年以降に施行されるGENIUS法の本質を大胆に整理すると、通貨発行者を権威の象徴法王庁=中央銀行から民間・市場へと大転換させることであろう。1.通貨発行の主体➡政府・中銀から民間・市場、へ、2.通貨価値の源泉➡これまでの政府権力(=徴税権)からブロックチェーンに集約される技術と市場の英知に、3.通貨流通の範囲➡これまでの国境を越え、サイバー空間も含めた全宇宙に、と言う大構想が見えてきた。ステーブルコインと言う新たな通貨発行は、米国にとって新しい需要創造手段になると思われる。第一に通貨発行企業は担保として、主に米国国債の保有が義務づけられるので米国債需要が高まる。そして、ステーブルコインの発行を海外企業に認めれば、米ドルの信用創造、米ドルの需要を一層強める。
2026年の世界経済・米国経済と市場は堅調に推移すると想定される。
米国経済、欧州経済、日本経済共に高圧経済化+軍事経済化により、二つのデフレの風(中国とAI化)を打ち返す必要がある。当面は現在の繁栄の源泉である、株式資本主義を推進せざるを得ないだろう。
(4) 2026年から高市保守革命で日本ルネサンスへ
日本の失われた30年は完全に終わった
アベノミクスがスタートした直前の2012年と比較すると、株式時価総額は3.9倍(301➡1161兆円へ)、法人企業経常利益は2.4倍(48.5➡114.8兆円へ)、一般会計税収は2倍(40.9➡80兆円強へ)、GPIF運用益は6.6倍(25➡166兆円へ)、外人観光客4.8倍(835➡4000万人へ)と目覚ましい上昇を見せた。名目GDPは1.24倍、就業者数は1.09倍、女性就業率61%から85%へ、最低賃金は759円から1021円へ、と大きく改善した。デフレが終わり0%であった政策金利は0.75%まで引き上げられた。85円であったドル円レートは156円に上昇した(図表8参照)。
米国技術のコピーと、米国市場での販売を基本とした戦後日本企業のビジネスモデルは、Only one分野、競争のないBlue Oceanへと戦略転換した。円高対応のグローバル化も大きく進展し、グローバルトップ企業も多くあらわれた。米中対立と円安により世界需要が日本に集中し始めた。コーポレートガバナンス改革により株式資本主義がようやく日本にも定着し始め、企業の配当は対GDP比0.9%(2000年度)、1.8%(2012年度)から6.2%(2024年度)へと米国以上の水準まで高まった。家計金融資産(年金保険の準備金を除く)の7割を占めていた現預金が徐々に減少し始め貯蓄から投資への流れが確かになった。
但し国民生活は失われた30年のままである。実質家計消費は2012年度末302兆円、2013年度末311兆円に対して2025年3Q298兆円(2020年基準)と、むしろ低下している。経済成長率もG7の中でも最低水準が続いている。デフレ経済下で強行された「社会保障と税の一体改革」により国民負担率が、2011年度の38.8%が2022年度48.4%、2024年度(推)46.2%と急上昇したためである。しかしこれから高市政権の高圧経済政策による減税が打ち出され、実質消費も回復し始めるだろう。国内投資も上向き、消費と投資の拡大好循環が起きることはほぼ確かである(図表9,10参照)。
日本不振の真因・・・大義の喪失(他力本願の日本国家像80年)終焉へ
それにしてもなぜ日本はかくも長き不振に陥ってしまったのだろうか。日本は明治維新以降の改革により植民地化を逃れられたばかりか、非西欧にあって唯一民主主義を受容し工業化を成し遂げた国、という自負があった。敗戦後の奇跡のような復興を遂げたことも、日本の固有の長所が成せるものど意識された。Japan as number oneを支えた誠実、勤勉、公正、協調的な国民性は日本の長所としてたたえられた。その国民的長所は短期間に変わるはずがないのに、全く見えなくなってしまったのである。
様々な分析がなされているが、最も本質的な原因は大義、つまり国の羅針盤の喪失であろう。
明治の日本には、先進国に追いつき、民主主義を受容し、富国強兵を成し遂げるという強烈なナショナリズムが大義であった。
戦後の昭和の羅針盤は平和主義と経済主義に変わった。戦争の反省と米国軍事従属の大枠の中で、ナショナリズムを棚上げし、与えられた運命の中で賢くふるまう「町人国家論」(天谷直弘氏)が広く受け入れられた。このナショナリズム棚上げの状態は、米国の日本たたきにより破綻し、大義を持たない日本は茫然自失に陥った。
失われた30年はまさに大義喪失の時代であった。企業は脱日本・グローバル化で生き残りを図り、個人は海外との接触を減らし内向きになる「引きこもり」で精神的安寧を求めた。この股割き状態の中で、政治家と官僚は自立心を失っていた。最大の政策目標が財政赤字削減、老後不安を担保する社会サービスの充実などと言う矮小性であった。
高市政権登場の必然と歴史的使命
中国の強大化とトランプ政権の安全保障戦略の大転換は、日本に再び大義に基づく国家経営を迫っている。ナショナリズム、力への信仰、現実主義へのシフトが必要であることは、自明である。政治家や言論エリートより早く、国民・有権者がこのことを気づき始めた。2025年7月参院選挙での、改革派保守野党の大勝、自民党内で少数派であった高市氏の総理総裁選出、自公連立から自民維新への連立の組み換えと改革派保守野党の政権協力等は、有識者やオールドメディアを置いてきぼりにする形で、民意が推し進めた変化である(図表11参照)。ここに高市政権登場には必然性と歴史的意義があることを肝に銘ずるべきである。
高市政権は圧倒的国民の支持の下で、保守ナショナリズム革命を遂行していくだろう。その端緒となる解散総選挙から動きが出てくる。富国強兵、財政再建の犠牲にされてきた国民生活の向上、米国に仕組まれてきた国際分業の有利化(例えば台湾から日本への生産移転)は必須である。円安は日本への生産移転を促進するだろう(図表12)。
日本には保守・ナショナリズム革命を成功に導く二つの力がある
保守・ナショナリズム革命を成功に導く、米・欧・中にはない要素の第一は経済資源と投資力である。高い企業収益力、潤沢な貯蓄・資本力、実は豊かな財政出動余力である(図表13参照)。また世界で最も相互信頼が高い国=トラストの国=最低のリスクプレミアムの国である。
第二は国民的結束力である。現代日本人は初めて自らの足で立つ喜びを共有するはずである。大義に結集する条件は日本が世界で一番揃っている。同質的国民性、高まっていた大義への希求、熾烈な日本の国際環境(危険な隣国中国・ロシア・北朝鮮、頼れない覇権国米国)、禁じられていたナショナリズムの復権(愛国心、国家主義の名誉回復)などである。
このようにして日本に大義が戻れば、政策や企業行動のベクトルが揃い、決断の時間を早め、変化を促進する。意見が対立する財政論議にも直ちに解が下されよう。
高市改革急進展するだろう。それは最も力強い株価支援策となる。







